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CEDEC2023に登壇してきました!テクニカルアーティスト編

 こんにちは、テクニカルアーティストの荒井です。
 8/23 (水) 〜 8/25 (金) に開催されたCEDEC2023にて、「『白猫GOLF』における “問題解決型TA” の制作フロー最適化事例 ~“ツールをつくらないTA” の価値とキャリアについて」と題した講演をさせていただきました。
 当日ご参加いただいたみなさま、その後の懇親会などで私たちに言及してくださったみなさま、本当にありがとうございました!

 講演資料はCEDiLにて公開されています。キャリア開発まで含めてTAの業務事例を扱う講演は比較的珍しいと思いますので、みなさまのご参考になれれば嬉しいです。

 さて、今回の講演内容に関して。以前から私たちのことを知る方々から「今回の事例って平林さんだから上手くいったんでしょう?」といったリアクションをいくつかいただきました。個人的にはお褒めの言葉だと前向きに捉えていますが、「実際のところどうなんだろう?」と思ったので、本人に聞いてみました。

講演当日の様子

 それでは以下、「話し手:平林」「聞き手:荒井」による「なぜ『白猫GOLF』の制作フローをリビルドできたのか?」がテーマのインタビューになります。



「こうすればきっとうまくいくんだろうな」

ーー(荒井)今回は最初からフロー全体を見直すことになってたけど、不安とかは無かったの?
 (平林)昔からやりたいと思ってたんですよね。私が『白猫GOLF』に入ったときはまだ開発段階で、これから長く運用されるプロジェクトになる可能性が大きかったと思います。だから不安とかよりも、リリース後の運用にも長く耐えられるフローというのを自分で一度作ってみたかったのかもしれないです。

ーーつまり「自分でイチから組み立てた!」って思えたことは、今まで一度も無かった?
 そうですね、イチからやったと思えることはなかったと思うんです。そもそも、ツールとか仕組み化して自動化するっていう実装の部分は私はあまり得意じゃなくて、自分が一人でやりきるのは厳しいと思ってました。でも今回は、「こうすればきっとうまくいくんだろうな」っていうのは、最初から自分の頭の中にあったんです。

ーーなるほど。でも初めてなのになんでそんな自信が……?
 最終的にゲームで使うデータの構造がある程度わかってたからですね。DCCツールから書き出せるデータの形式や情報だとか、そういうことを知ってたんです。何が必要か分かってたからだろうな。
 「どんなデータを扱っているのか」と「それをどういう風にUnityに組み込めばゲーム側で利用することができるのか」、これが既にイメージができていたからです。

ーーでもそれだけじゃ確信まではできないんじゃない?
 そうですね、それだけじゃできない。
 自分よりも権限が上の人たちが「やってもいいよ」って言ってくれる状況になってた。あと、「自分たちのつくった仕組みに現場のデザイナーが乗ってくれるか?」っていうのも大事ですね。やっぱり自分たちが提案とかしても現場からのNOが出てできないこともたくさんある。現場とちゃんと関係を築けたのかな。私は、お互いに信頼できてたと思います。

ーーなるほど、つまり「知識と経験」「権限と信頼」があったんだね。その上でTAチーム内で実装力を確保できて体制で状況が整ったと。

ーーところで「前からやりたいと思ってた」とのことだけど、いつ頃からそう思ってたの?
 入社1~2年目で白猫と黒猫でお知らせ画像の制作フローを作ってる時から思ってましたね。なんなら入社したときから、それはずっとやりたいって思ってましたよ。

知識と技術、権限と信頼

ーーじゃあ本題、まず「知識と技術」はどうやって身に付けることができた?
 白猫や黒猫みたいに長く運用しているタイトルのデータを見てて、どれもデータとしての繋がりが細切れで。例えばPSDと最終的なPNGの繋がりがガタガタしてるのを、ずっと見てたんです。「PSDから最終的なUnityのPrefabまで全部繋がってればいいのにな」って、ずっと、それこそ入社した時から思ってたんです。だから、ゲームの作り方やデータの扱い方を、現場の制作者たちにちょこちょこ聞いてたんです。それでいろんな作り方を知ることができたんだと思います。
 あと「こういう時ってどうするのが良かったんでしょう?」って、TAチームの人たちにもよく聞いてました。

ーーたしかに、そういうのよく言ってたね。そうやっていろんな人のノウハウとかが自分の中に蓄積されてたのか。いっぱい聞いてるとそれぞれの共通点とかも見えてくるよね?
 見えてきます。いろんな人に聞きまくってると、 共通点みたいなものがなんとなく見えてきますね。頻繁に聞くっていうのはもちろんですけど 、ベテランアーティストの人たちにもよく聞いてました。
 あと、データをまとめるのがうまい人のやりかたを参考にしてました。『白猫GOLF』でやってた「スプレッドシートにとりあえずまとめる」って方法は、そういうのがうまい先輩の真似です。

ーーありがとう。じゃあ次は「権限と信頼」だけど、権限は管理職側で最初から握ってたからなぁ……。現場に対する信頼や安心はなんで持つことができたんだろう?
 なにか質問したときに答えが早かったというか、聞いたことに対する理由付きの答えがいつも返ってきたんです。例えば使い方の分からないデータについて聞いたときに、「ここでこういう風に使ってます、そういう使い方になる理由はこうです」とか。そういうやりとりが何度も続いていて、この人は信頼できるって思いました。
 そういえば、こないだ他の人に言われて初めて知ったんですけど、私って初対面の人に対してすごく冷たいらしいんですよ。「なんでこうなってるんですか?」ってめちゃめちゃ聞いてくるから。そういうのをガンガン聞いてくるTAに対して一歩引いちゃうっていう姿勢が全くなかったのは、本当にありがたかったですね。質問した私と同じ目線で教えてくれてました。

ーーたしかに、そういう人をいつも探してるよね。誰がどうみてもキーパーソンな人だけじゃなくて、「その話題の中心になりうる人」を選んでるんだろうなって。
 いろんな人に聞きまくってますけどね。「こういう話って誰が中心になってるんですか?」 とか「これに興味ある人って誰ですか?」とか。

ーー『白猫GOLF』のときも、ずっとそういう人を探してた?
 そう。でも最初はやっぱりうまくいってなくて、たぶんそれをみた上の人が座組を変えてくれたんだと思うんですけど。私はそういうやりとりができる「TAにとってのキーパーソン」になってくれるような人をずっと探してたから、その人が来てくれて本当によかったです。

不安にならず前向きに

ーーTAチームの実装担当者は、キャリア的には平林さんよりだいぶベテランなんだけど、それに対して不安とかなかったの?萎縮しちゃうとか指示出しにくいとか、何かありそうなもんだけど……。
 ない、ないですね。
 いままで前職のときもそういうふうに考えたことなかったです。仕事として自分に任されたんだから自分がやらなきゃって。でも仕事ってそういうものじゃないですか。できるできないじゃなくて「やらなきゃ」って思ってました。

ーーそういうのって、気合が入る一方で不安になる人も多いんじゃない?
 そうなんですか……?

 うーん、そういうのはなかったですね。今までもあんまりそういうふうに思ったことないんですよ。

ーーなるほど、じゃあそこは本当に「平林さんだからこそできたこと」なのかもね。


支援者であり制作者でもあるということ

 インタビューは以上です。

 上司の私から見た平林さんは、とかく真摯に、日頃から制作現場とコミュニケーションを取り続けている人です。それは「アーティストを助ける」「制作を効率化する」という足下の成果を目指す以上に、「同じ作品の作り手として互いに支え合っていく」「その為に自分ができることは何か?」、そんな意思を感じることが間々あります。
 今回の『白猫GOLF』で行ったワークフローの立て直しは、そんな姿勢が見事に結実した成果のひとつだと、今回のインタビューを通じて改めて感じました。

 コロプラのTA組織は全社横断の制作支援部門です。ですがそれはあくまで組織構成上のお題目。私たちは「ゲームをつくる」ということを強く意識しながら業務を行っています。TA以外の職種でも、当然その姿勢は変わりません。「自分は “制作者” である」と強く信じて疑わない方、ぜひ私たちと一緒に仕事をしてみませんか?